介護職員・リス

介護保険がはじまって数年後。リス(仮名)が体験する介護現場の世界。このブログは本人には内緒で、身近な知人トリイが記録。本人ではないので間違っている場合もある。登場する個人名や施設名はすべて仮名。

介護施設立ち上げの為の膨大な書類作成は私トリイも手伝い、数か月かかった。
そういった事は初めての仕事で、専門の書士に任せたら大変な出費になる。
数か月の給料どころではない。
建築の基準も面倒なところが多々あり、開所までの半年間は大変だった。

職員は厳選に厳選して選び、最低人数で最強の力を出せるメンバーとした。
アニマルセラピーを取り入れたり、他の施設との差別化で利用者にアピール。
リスが得意な営業は精力的に頑張った。
小規模デイサービスはピーターランドと名付けた。

しかし、準備の段階からやや不安だった事が的中する。
経営者はやはり介護施設の運営を甘くみていた。あれほど念を押しておいたのに。
頑張って開所し、徐々に利用者が増えていく過程は順調といえた。
まだ信用のない新しい施設が認められるようになるには多少の時間がかかる。
それをエフ氏は待てず、何度となくリスと揉めることになる。
頑張っている職員の気運も下がる。

結局、全て任せるのは開所までの事だったようだ。
経営者はあくまでエフ氏だ。そうなれば去るしかない。
精魂尽くした施設を、職員と共に辞めていった。
嵐のように過ぎた一年は、ひめさゆりの頃を彷彿とさせる。

ひめさゆりの頃は何も知らない介護の世界で無我夢中での経営者との対立。
今回は理解して慎重に進めたあげくの結果だった。
どちらもやはり経営者との対立は同じだった。

この先、リスの行く道は残されているのか




突然の電話は、グランドガーデンの利用者の家族だったエフ氏だ。
介護施設を立ち上げたいが力になってほしいと言ってきた。
てんてん家族をまだ離れる気がなかったころだったので、相談だけは受けようと会ってみた。
小さなデイサービスを考えているという。
経営的にはかなり厳しいことや、人材の確保も大変な事を説明するが諦めない。
新しい施設ができると内覧会などに一緒に行ったりした。

自分で施設を建てる力はないけれど、自分に任せてもらえば精魂尽くして頑張る。
エフ氏は設計から全て任せると言ってくれた。
それでもリスは迷っていた。
介護の仕事は制度もどんどん移行して厳しさは増している現状をよく知っている。
まったく、この業界を知らないエフ氏が簡単に考えているような気がしてならない。
何度も何度も念を押して聞いてみたが決心はゆるぎないと思えた。 その時は、、、

そのころ職場も、不慮の出来事が重なり社長と相談する機会を失っていた。
もう一度、今度は自分が立ち上げるつもりで小さな施設で頑張ろう。
もちろんエフ氏の施設ではあるけれど、運営させてもらえるなら理想的な施設を作ろう。
決心したリスは、てんてん家族を退職した。
二回も雇ってくれた場所で、短く勤務して辞めていくリスを今回も皆は暖かく見送ってくれた。
社長ともっと話ができていたら、ここにずっといたかもしれない。
それでもリスは何か求めて出ていくのだろうか



今はグループホームの一職員でしかない。とても働きやすい職場であるけれど、なんか物足りなさも感じている。
本当は二度も助けてもらった、この施設でもっと恩返しするような仕事をしたいと思っている。
でも、上からの指示がないので少しじれったい

このくらいのテンションがいいんだよ、と周りに言われながらグループホームに勤めて2年になる。

この間、何度上司とのすれ違いがあったろうか。
ケアマネの資格取得まではおとなしく、黙々と勤めてきた。
でも、やはり資格を生かしたい、あるいは、もう少し自分の特技を生かせることをしたいと
徐々に感じ始めていた。
何度も社長に問われる。「あなた、何がしたいの?」
普通、職員にそんな事を聞くだろうか?でも、リスに社長がそんな聞き方するのも分かる。
きっと、何か変なオーラが出ているのだろう。
「こいつ、ここにずっと居るつもりだろうか?もう何処かに行く予定なのだろうか」
リスの気持ちもコロコロ変わり、そのつど話す内容は違ってきた。
「せっかく資格があるのだから居宅でケアマネ業務がしたい。一度はグループホームの管理者業務とケアマネを兼務でしてみるのもいい。営業なら自信があるので、営業の部署を作ってまかせてもらえないだろうか」
どれも言ってみた。しかし社長とあまり話がかみ合わない。
どうも、お互い心中をさぐりあいながら本音をハッキリ言わないことが原因であると私は思う。
リスの説明べたもあるだろう。
社長はずっとリスを気にかけてはいてくれた。

そんな頃、ある知人から自宅に電話があり、施設立ち上げの相談を持ち込まれた。

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